税理士(財務コンサルタント)の選び方
私の考える“良い税理士の選び方”をご説明します。
もちろん、財務・会計・税務には様々な考え方があり、どの税理士も独自の経験を根拠とした考えをお持ちです。
したがって私の意見が必ずしも正しいというわけではありませんが、少なくとも、
経営者自身の考え方と同じ方向をむいた税理士を選ぶのが良いと思います。
具体的にはこれから述べていきます。
税理士の作る会計書類をめぐる問題点
税理士の作成する会計や税務の資料は、基本的には、「税金を計算するための会計資料」です。
もちろん税理士の主な仕事は税務の代行ですから、それが悪いというのではありません。
ただ、それだけでは不十分です。
会計資料は、納税のためだけに作るものではなく、
「経営を今よりも良くするための、意思決定の材料」でなければならないと思います。
「納税のための会計資料」は、あくまでも現在の財務状況を表したものに過ぎません。
優秀な税理士は、現在の財務状況を提示するだけではなく、そこから先の経営指導力を持っています。
面倒な税務を誰かに任せたいというだけなら、「納税のための会計資料」を作ることができる税理士に、
安価でお願いすればよいでしょう。
そうでないなら、きちんとした経営指導力のある税理士を検討していただきたいところです。
税理士の経営指導にありがちな問題点
税理士の経営指導を受けるとき、経営計画を作っていくことになると思います。
「粗利率何%を目指しましょう」とか、「自己資本比率を何%にしましょう」とかいった具合です。
このときの、「何%」という数字は、いったいどこから持ってきているのかご存知でしょうか。
実は、「業界標準の数値」を基準にしていることが多いのです。
「業界標準の労働分配率は50%だから、それに近づけるようにしましょう」といった形です。
同業種なら、どの会社でも大体同じような財務構成になります。
売値も、原価も、サービス提供に必要な人員も、同業種なら大差ないからです。
そこで、同業種の標準的な財務数値と、自社の財務数値とを比較すれば、
自社の財務数値の異常なところがわかるので、その異常な箇所を修正していこうというわけです。
しかし、そのような経営数字の決め方は、役に立たない場合も多いです。
同業であっても、経営のやり方、経営戦略はそれぞれ異なるはずです。
自社の経営戦略に最適な財務構造にしていけば、それで良いのです。
同業者よりもお客様に選ばれる企業を目指さなければならないのですから、経営数字もそれと同様、
同業者と同じ水準を目指すのではなく、自社独自のものを目指さなければなりません。
経営戦略について深く理解している税理士を選ばなければならない、ということでもあります。
「ひとり経営」の財務と、業界標準の財務とは全く別物
「ひとり経営」の進め方のページを読めばご理解いただけると思いますが、「ひとり経営」という経営スタイルの場合、
一般的な経営とはかなり異なる財務運営をしていくことになります。
つまり、一般的な経営についての専門家」である税理士よりも、
「ひとり経営」のスタイルに精通した税理士を選んだほうが良いでしょう。
もちろん私の「ひとり経営理論」だけが正解ではありませんが、個人事業やマイクロ法人の会計や税務についての
実績が豊富な税理士を検討した方が、良いアドバイスがもらえると思います。
節税についての考え方
支払う税金をできるかぎり少なくしたい、と考えるのは当然です。
しかし、節税の結果、逆に経営の首を絞めているようなケースもよく見かけます。
目先の節税が目的となってしまって、会社の永続的な発展という視点が抜けていると、そのような事態に陥ります。
節税が将来の負担になることも
私は、節税を積極的にはお勧めしません。その理由は次の2つです。
- 節税することで、将来にわたってお金が出て行く場合がある
- 節税のために買った資産や支払った経費が、後付けの法改正等で課税されることがある
利益を残さないために、税理士によっては、経費でモノを買うことをお勧めすることがあります。
例えば、車・保険商品・不動産・機械類・パソコンなどです。
節税のためとはいえ、これは本当に良いことなのでしょうか。
購入代金が出て行ってしまい、お金が残らなくなるのはもちろんのこと、
例えば車を買ってしまえば、駐車場代・ガソリン代等が将来にわたってずっと発生します。
保険商品であれば掛金、不動産であれば維持費等が発生するでしょう。
このように、「後々お金が出ていってしまうモノ」を買う節税は、私は「悪い節税」だと考えています。
「税金が減る」ということで目先は良くても、積もり積もって経営を苦しめていきます。
また、節税のために買った資産や、節税できると思って支払った経費などが、
後だしジャンケンのような法改正によって、課税対象になってしまうことがあります。
法の穴を潜り抜けるような節税は、税法とのイタチごっこです。
いつ課税されても仕方ないと心得ていたほうが良いでしょう。
私は、節税にお金や時間を使うよりも、どんどん利益を上げて納税し、
残ったお金をうまく活用していくほうが良いと考えています。
それに国の政策としても法人税を下げていく方向に進みそうなので、納税の負担は小さくなっていくでしょう。
これらの点を考えても、中・長期的な経営改善のために税理士を探しているなら、節税が得意な税理士よりも、
経営指導力の高い税理士を選ぶほうが良いというのが私の考えです。
専門型の税理士か、特定分野に偏らない税理士か
税理士業務のなかでも、何か特定の分野に特化した税理士さんが増えています。
これは、税理士の業務も幅広く、また、税理士同士の競争も激しくなってきていることが要因でしょう。
税理士のホームページを見てみるとわかりますが、ざっと挙げてみただけで、次のようなパターンがあります。
- 事業再生に強い
- NPO法人設立支援に強い
- 相続税対策に強い
- 経理合理化に強い
- 株式公開に強い
- 記帳代行ならお任せ
このような、特定分野に強い税理士には、利点もあれば弱点もあります。
現時点で自社の課題が明確になっているなら、その分野に特化した税理士を選ぶのは良いことだと思います。
しかし、「ひとり経営」の場合や、中長期的な視野で、戦略全体・経営全体のバランスをとった
経営指導を求めているなら、特定分野に偏らない税理士の方が良いと思います。
過去の数字ではなく、未来から逆算した経営数字を
前に述べたように、財務会計資料は、あくまでも現在の財務状況を現したものです。
過去の行動の結果、その成績表に過ぎません。
大事なことは、未来です。これから、何を目指し、どのような行動を取っていくかです。
つまり、未来の「人生ビジョン」から逆算した経営数字を決めていくことが重要なのです。
過去の数字を参考にして改善を続けていくことは尊いことですが、その改善を続けても
求めるものが得られないなら、やり方を変えなければなりません。
東京から大阪まで行くときに、徒歩という方法もありますが、残された日数が1日しかないなら、
新幹線や飛行機に乗り換えます。過去ずっと徒歩だったから、これからも徒歩にするとはならないはずです。
人生は有限なのです。有限だからこそ、将来のありたい姿から逆算して、経営目標を決めていかなければならないのです。
経営目標や人生目標をしっかり決めて行う経営は、向かうところが決まっているだけに
気楽に進めることができます。その結果、ストレスとは無縁な楽しい経営ができるようになるかもしれません。
経営者も、ストレスを感じることなく、楽しく生きてほしい、というのが私の願いです。
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